東京都田園調布3丁目のYさん
<【後段】二次相続対策を見据えた資産の組み換え>
◆田園調布三丁目の邸宅を解体し、外国人向け高級貸家と邸宅を建築
①突然に相続が発生
前段の資産の組み換えを行なっている最中に、父親の相続が発生した。幸い一次相続対策は万全にしていたので、慌てることはなかった。しばらくしてから、田園調布3丁目の邸宅を思い切って有効活用することにした。
目的は母親に楽をさせてやることと、二次相続対策だ。母親も相続で資産がかなりあったから、次の二次相続には相当の税金がかかってくるはずだ。
②母親の納得が鍵に
父親が亡くなったあと間もなく、自宅兼事務所にしていた建物を建て替え、外国人向け高級貸家と自宅を建築するという提案をした。理屈としては理解してもらえても思い出が多く残る邸宅を解体することに母親が耐え切れるのだろうかと心配した。ましてや自宅の隣に、目の青い外人が住むというのにも抵抗があるのではないかと想像していた。
ところが、意外にも母親は平然とした表情で計画を認めた。心中、複雑な思いはあったはずなのだが・・・。
方向性が決まってからは、むしろ母親が主役となる。新しく建設する邸宅と外国人向け高級貸家について、その配置と間取りの大筋は母親自らが絵を描いた。専門家から見ても正しいゾーニングだった。90歳を超えていたが、土地の特徴と自分の生活スタイルを良く認識してプランニングされたことに関係者の誰もが驚きを隠せなかった。
数々の課題を克服した
実際の計画にあたり、数々の課題が出てきた。
ア.日本一の高級住宅街と言われ、その中でも高台にあり、最も区画割りの大きい
超一等地に相応しい計画としなければならない。
イ.建築の規制が大変厳しい。建ぺい率40%、容積率80%、地区計画(敷地面積の
下限165㎡、建物後退が隣地から1.5m、道路から2m必要。共同住宅や長屋の
建築不可)、田園調布憲章と言われる地域の紳士協定など環境を維持するため
の規制をクリアーしなければならない。
ウ.外国人向けの高級賃家のニーズはそもそもあるのだろうか。また、採算性は
確保できるだろうか。
エ.地域の環境を守るために住民の反対運動が起きるのではないか。テレビの
ドラマの撮影に使われたことのあるような、田園調布の中でも存在感のある
邸宅の土地が分割されてしまうことに地域住民の反感を買うことはないか。
③設計コンセプト
こうしたいくつもの課題を克服するため、設計コンセプトを「ドイツ人も驚く本格的環境共生住宅」とした。田園調布憲章を遵守して、地域の街並みを守るという意志を尊重しなくてはいけないからだ。
環境共生住宅の定義は「地域環境を保全するという観点から、エネルギー・資源・廃棄物などの面で十分な配慮がなされ、また、周辺の自然環境と親密に美しく調和し、住み手が主体的に係わりながら、健康で快適に生活できるように工夫された住宅およびその地域の環境」とされている。
具体的な設計に取り入れた点は以下の通り。
・「和にして、モダン」な表情の外観とする。
・外断熱工法を採用して、省エネと快適性と高耐久性を確保する。
・高齢者対応用エレベーターを設置する。
・邸宅の南北に高木を配置させ、微気候の発生を促進させ涼を取る。
・熱損失や日射取得の小さな建物の形状とする。
・通風と採光に優れた間取りとする。
・節水型便器や水洗の節水コマを使用する。
・リサイクル資材、建材を使用する。
・池を親水空間として再生する。
・高齢者対応としての遮音・防音・バリアフリー住宅とする。
・健康住宅・ユニバーサルデザインに配慮する。
実は田園調布にはドイツ人が多く住んでいる。ドイツ人はアメリカ人のように港区に住むのではなく、郊外で緑豊かな環境を好む傾向があるためだ。そこで、環境先進国のドイツ人にも評価されたいと考えた。
④意外に高い利回りに驚き
外国人向けの高級賃貸住宅を計画するにあたり、徹底的な市場調査を行った。
それによると、既存物件で一番多い家賃価格帯は100万円前後だった。しかし、家賃100万円にしては広さや設備の点で見劣りがするものが多かった。坪当たり賃料が1.2万円~2.0万円とバラバラだったことにも驚かされた。
原因は建物のグレードが大きく異なっていることだった。建築費を節約して安普請なものを建てたら高い家賃は取れない。逆に、天井を高くし、設備や内外装のグレードを上げることによって賃料はかなり高く貸せるのがこのマーケットの特長だ。
分かりやすく言うと、面積70坪の貸し家を坪50万円で建設すると家賃は約70万円だが、坪100万円で建設すると家賃は2倍の約140万円取れる。貸家はなるべく安く建てたほうが得という従来の発想は通用しない。
このことを良く理解してもらい、安普請な建物にはしなかったため坪2万円弱で貸すことができた。坪2万円と言えば、赤坂・麻布・青山と言ったいわゆる「3A」と言われる地域の超高級マンションの坪賃料と変わらない。具体的には
面積70坪の貸家を7,000万円かけて建築して、家賃が130万円になった。利回りは22%にもなる。土地代金は入っていないが驚異的な利回りである。
この計算で行くと、土地を田園調布に買って高級貸家を建てると6%ぐらいの利回りになることが分かる。投資としても成り立つということを発見した。
⑤建築会社の選定が重要に
超高級住宅地に超高級住宅を建てるとき安普請はだめだが、割安に建てることは必要だ。そこで、この条件に該当しそうな建築会社を8社依頼者に紹介し、その中から2社選んでもらい相見積もりを行なった。
解体工事も外構工事も競争入札の形を取り一番適切な会社を選択した。コンサルタントの強みはこれら業者の体質や、価格、納期などをチェックし最適な業者を選択することができるということにある。最終的に選ばれたのは大手ハウスメーカーの下請けを行なっている豊島区の建築会社だった。
選択された理由は、価格が一番安いこと、和室の造作が得意であること、リフォーム工事が出来る(リフォーム工事が出来る業者であれば、元の家の欄間や床柱、ステンドグラス、食器棚などの移設ができる)ことなどだった。
偶然にもこの建築会社の大工は、元の家の改築工事を手がけた経験があった。それだけではなく、軽井沢にある別荘の工事も手がけていた。さらには同じ田園調布にある妹さんの家も手がけていたのである。腕の良い大工が少なくなっていることが背景にあるのかもしれないが、偶然がいくつも重なって何かの縁を感じた。
⑥相続税の評価減も得られた
今回土地を3分割にすることによって土地の相続税評価を下げることにも成功した。元々は250坪の角地だったが、それを100坪、100坪、50坪の利用形態別に分けた。オール角地であった土地が、片側の低い路線価に面する土地が100坪、片側の高い路線価に面する土地を不整形地の100坪とし、角地はたったの50坪にした。土地の分割の仕方を工夫することにより、相続税評価額を下げることにした。
もちろん、貸家建て付け地としての評価減も得られるし、建築費と固定資産税評価の差も評価減となる。貸家の方は借家権が付くのでさらに建物の評価が30%低くなる。「アパートを建てると節税になりますよ」という根拠の無いセールストークではなく、実際に数値でシミュレーションすることが相続対策ではとても重要だ。
⑦結果的に
邸宅を解体し、新たに外国人向け高級貸家と邸宅が誕生した。これも資産の組み換えである。ふんだんにあった緑はそのまま残した。家よりも高い樹木があるため建替えたにもかかわらず風格はそのままである。
庭園は邸宅からはもちろん、貸家からも望むことが出来、邸宅の借景を上手く取り入れることができている。外国人向け高級貸家は入居者の交代が時々あるが、いつも直に決まってしまうのでまったく心配がない。
外壁にも気を使った。田園調布のよう壁は大谷石で統一されているので外壁に大谷石調の外壁材を使用した。そのため新築住宅にありがちなキンピラ感は無くしっくりした外観にすることができた。
腕の良い大工が担当してくれて品質も良かったことと、ハウスメーカーの下請けの建築会社に直接発注したので中間マージンが無く、かなり割安に建てることもできた。
また事務所機能を港区の本社に集中させることができた。従来のように田園調布と港区を行ったり来たりする必要がなくなった。副次的ではあるが、2次相続対策にもなっている。
そして何よりも、母親が生き生き伸び伸びと住める家を手に入れたことが最大の財産となっている。
■Yさんの感想
母の協力があって実現
2次相続のことを考えると、やはり資産の半分は貸家にしておいた方がいいだろうということで踏み切ったが、何よりも母親の理解がありがたかったです。
田園調布の家に関しては、所有者である母が全面的に私を信用してくれて、任せてくれたということです。元の家を壊すなんてまっぴら御免だと言われたらそれっきりでしたから。思い入れはいっぱいあったと思います。
最大の障害と考えていたそこが、意外にも一言で片付いてしまったので、これは絶対上手くいくなと予感しました。母に言いました。「今度エレベーター付のすごい家を作ってあげたい」と。あれが効いたのかもしれません。
あとは昔からの家具とか、記念のステンドグラスとかは新しい家に使って残していこうと提案しました。それと、福田さんのブレインなんだけど素晴らしい設計、施工ができる職人に恵まれたのが大きかったですね。
母にも経営感覚があった
母は隣に外国人が住むということに対して全然抵抗はありませんでした。結構、海外旅行をしているので外国人慣れしているということもあるかもしれません。庭を共有することもいいし、見られても構わないと、そんな感じでした。それよりも、せっかくいい庭があるのだからそれだけは壊さないというのが基本でした。母にも経営感覚があって、これをうまく利用した方がいいと分かったのだと思います。
今までは事務所と家が一緒で窮屈な生活に耐えてきていましたから、そうは言わないですけどね。今度は自分で自由に出来る空間を持ちたいという気持ちがあったのではないかと思います。隣に借家があっても家賃が入るのだから、全然問題ないじゃないか、そういうことだと思います。むしろ今の喜び方を見ると、これまで母は結構大変な環境にあったのだなということを感じました。
前提は皆がハッピーになること
私は運が良いほうだと思います。自分だけ得をしようすると逆に運が逃げていきますが、周りの人の事、街のこと、兄弟の事、親のこと、従業員のこととかを考えると、結果として上手くいくんだなあと思っています。
皆がハッピーになることが、私の一番のハッピーだと思っています。周りの人、取引業者を含めて全てです。サービス業を行なっているのですからやっぱりサービス精神がないとだめですね。その結果多少の利益が生まれ、そのおこぼれを頂戴すればいいと、そういう考えがなかったら上手くいかないと思います。
私の不動産に対する見方
不動産と言うのは立地産業です。不動産投資をする場合には立地を充分考えて投資をするということが大事だと思います。最悪でも誰かが買うだろうと思われるようなものを買うべきです。
次の買い手も、やはり富裕層とか資産家とかある程度余裕のある人達の目にかなうものでなくてはいけません。単に、安いからというのではダメです。
私も若い頃やりましたが、家に入ってくるチラシを全部見に行きます。簡単に見られますからね。そうやって何回も足を運んで物件を見ていくうちに物件の良し悪しを見る目が出てきました。これはいくらだが、あれはいくらだったとか。割安か、割高かが分かるようになります。やっぱり努力しない人は良いものにありつけません。
飲食業でも、不動産業でも、酒の卸しでもひとつの商売が成立してそれでおしまいではないんです。そこから先もメンテナンスが延々と続くわけです。メンテナンスが必要という点については不動産事業もお酒の販売も一緒ですね。
きちんとメンテナンスをして、入居者に住みよい環境を作ってあげなければ成功しません。これは不動産事業も同じだと思います。
全くサービス業も物販業も一緒です。それをやっていくことが顧客の確保に繋がり、社会貢献にもなる。社会貢献をしながら正当な利益を得るということをやっていけば、会社の名声にもなってうまくいきます。