資産運用ビジネス
成功するアパート経営 ~10年後でも競争力のある賃貸住宅とは~
今、年金制度の不安や所得減少の穴埋めなどの収入対策として、もしくは高齢化社会を迎え相続や事業承継対策として賃貸住宅経営が注目されています。
ところが賃貸住宅経営で順調なのは最初の10年。その後は賃料の下落、空室の増加、修繕費の増加、減価償却費や金利等の経費減による所得税の増加などの逆風に直面し、物件毎の優劣が顕在化してきます。そこで、10年後においても競争力のある賃貸住宅にするための方策を考えていきたいと思います。
1.アパート経営の成功の鍵は費用対効果
ある首都圏の郊外にある市街化区域内農地を多く所有するいわゆる地主さんの話です。賃貸住宅専門の建築会社の薦めもあって、相続対策ということでファミリー向けテラスハウスタイプの賃貸住宅を経営していました。相続が発生し当社が相続コンサルを行って判ったのですが、採算が全く取れていないのです。この方は数億円をかけ立派な賃貸住宅を建てたにもかかわらず、手元に現金がなく、土地資産10億円以上あるのに現金はたったの数百万円でしかありません。典型的な都市(郊外)農家のケースです。
テラスハウスの面積は24坪あり駐車場もゆったりとってあります。肝心の家賃を尋ねたところ7万5千円とのことです。坪当たり賃料が3千円強です。これでは、どのように頑張ったとしても採算が合いません。建築費が坪60万円と仮定すると利回りは表面でたったの6%です。もちろん、ご自身の土地なので土地代は必要ありませんが、土地代金を含めた投資利回りはさらに低くなります。
「相続対策だから、儲からなくても構わない」と真顔でお話される方がいますがとんでもない間違いです。返済に苦しくなり、いざテラスハウスを売却しようとしても、表面利回りが6%である収益性の少ない郊外のアパートなど見向きもされません。売却するとなるとやむなく価格を下げて売ることになりますが、土地が無くなり、さらに借金も残るという最悪の状態になりかねません。
そもそも、坪賃料が3千円強しか取れないところにアパートを建てること自体が間違いだったのです。
私は何も賃貸住宅経営を否定しているのではありません。むしろ、他の事業と比べ、極端に失敗の少ない事業だと考えています。例えば、レストランを開業したとします。いったいどれくらいのお客様が来てくれるのか、どの価格帯のメニューが売れるかなど、事業計画など作ってみたところで、本当のところはふたを開けてみないと売上も経費も読めません。何千万円と投資しても、資金回収できないまま廃業に追い込まれることはよくあります。ところが賃貸住宅は市場規模が大きく、近隣の事例を見れば、いくらなら借りてくれるのかは簡単に想定でき、年間の売上予測もほとんど正確に出せます。固定資産税や管理費等の支出も同様に事前に想定できます。極めて予測の立ちやすい安定した事業なので、経営にタッチしたことのない方でも安心してできる唯一の経営だと思います。
そうは言っても賃貸住宅経営も経営の一種なので、費用対効果を十分に吟味しなくてはなりません。賃貸住宅の費用対効果は分かりやすく、表面利回りという指標で簡単に判断できます。投下資本に対する年間収入の割合であらわします。
表面利回りが最低8%なければ、全額ローンは危険です。経費2%、減価償却分(修繕積立金にあたる)2%、金利4%でトントンという計算です。
経営というのは利益が出てはじめてサービスができるものなのです。費用対効果の合わない建物を建てて利益が出なければ、修繕費や掃除等の維持管理費が捻出できないため、サービスの低下を引き起こします。サービスが悪くなると、空室が増え、家賃が下がるなどの悪循環となっていきます。
入居率が高い=賃貸経営が成功しているということではありません。入居待ちの出るような立派な賃貸住宅を作っても赤字であれば長続きはしません。入居率が高いというのは、ひょっとすると安く貸しすぎているかも知れないし、過剰品質のためにかかった費用が高すぎたのかも知れません。
不動産投資ファンドのようなプロは土地を取得して、賃貸経営を行います。近い将来売却を想定しているところに通常の賃貸経営との違いがありますが、投下資本の中に土地代金を含めているところに着目してほしいと思います。
賃貸住宅経営を検討する際には、たとえ土地を所有していたとしても土地代を含め建築費と併せた総額で利回りを判断しなくてはなりません。土地代も含め表面利回りが8%を超えるなら、その土地に建てても問題ありません。そうでなければ、その土地を処分し賃料が高く取れる需要の高い場所に土地を組み替えて建てましょう。
2.女性を意識したプランが有望
所有する土地が賃貸住宅適地であれば、その場所に建築するわけですが、プランニングによって費用対効果が変わります。同じくらいの建築費であるならば、女性に選ばれる仕様にすると良いでしょう。女性は男性と比較して遥かに厳しい選択眼で消費行動をします。その証拠にデパートに行ってみると分かるでしょう。服もバッグも女性物ばかりで、男性用売り場は1/10程度でしょう。女性は色の違い、形の違い、素材の違い、大きさの違い、長さの違い、アクセサリーとのコーディネートなど、大変細かいところまでに妥協を許しません。男性の多くは無頓着で極端に言えば、寒さを凌げればよいという人もいるでしょう。
そのような女性の心を捉えたプランであれば男性も問題ありません。
そこで、女性の好むプランとはどのようなものかを考えてみましょう。
先日、当社の秘書が賃貸住宅を借りることになったので、所得税のことも考え会社名義で借りる、いわゆる借り上げ社宅にすることにしました。
秘書の希望条件は以下のとおりでした。
1.賃料:9万円ぐらい(管理費込み)
2.2階以上
3.ペット可(ねこ1匹)
4.駅近:最寄駅より徒歩5分以内
5.間取り:20㎡以上
6.建物:マンション(ペットがいるので防音がきちんとしている建物)
7.築年数:特に気にしないが、水周りが清潔であること
8.エリア:通勤時間30分(ドアtoドア)
9.防犯:安全なところ(大通りから行け、街灯がある等)
10.その他:窓から覗かれない部屋
ペット可、水周りが清潔、安全なところ、窓から覗かれない部屋などは男性の視点と違いが大きいところでしょう。
この条件で当社が仕事上でお世話になっている近くの大手不動産賃貸管理会社に、斡旋の依頼を行ないました。
図面で10物件ほど紹介してもらいましたが、上記の条件を満たす物件は3物件ほどでした。早速、管理会社の案内でその3物件を内見しました。さすがに選ばれた物件で、どの物件も良さそうです。
20数㎡と限られた面積の中で間取りを作るのですから、一つの設備を充実させれば他の設備を犠牲にしなくてはなりません。
結果的には部屋が多少狭くても、洗面所が広くて鏡の大きな綺麗な部屋を選びました。洗面所・洗濯機置き場・トイレが一体となっているために広々しています。浴室はもちろん独立しています。女性のライフスタイルではお風呂の時間が長いこと。洗面所で脱衣が出来て、歯磨きなどが足もとの濡れないところできることは重要なポイントです。浴室でのリラックスタイムや落ち着いて化粧できる環境が何よりも優先されるのです。
次に明るい雰囲気のある部屋であることが、内見したときの印象を大きく左右します。サッシが天井から降りていれば、部屋の奥まで明るさを確保できます。コーナー出窓風になっているだけで、そこに花を置いた生活をイメージさせ女性の心にグッときます。洗面所を広く取ってあるため、キッチンは部屋の中にありました。キッチン廊下沿いに作るプランを良く見かけますが、別に部屋の中にキッチンや冷蔵庫置き場があっても構いません。むしろ、廊下が短くなって効率的なプランができ上がります。
一番大切なのはカラーコーディネートです。女性はまず色で判断する傾向があります。ある携帯電話を供給する会社はカラーリングが勝負だと考え、十数種類の色を揃えています。建具の色などはパステル系にするなど可愛さをアピールすることによって人気を得ることができます。
ちなみにセキスイハウスさんでは単身者向けのジャンルを「さくらスタイル」と命名して女性向け仕様にしている点などはさすがだと思います。
3.ソフトが重要 生活支援付きアパートの誕生
賃貸住宅経営も単に箱を貸すということから、生活を支援するサービス業であるという発想に切り替えていく必要があります。
サービスの中身は、ゲストハウスのような共用のリビングやランドリー付きのものであったり、朝食や夕食の賄い付きであったり、管理人を在中させ、宅配便の取次ぎなどであったり、生活に潤いや便利さを付加する様々なサービス付き賃貸住宅が増加しています。
そこまで、手間暇をかけられないという方には、せめて設備の充実を図ることをお薦めします。
最近、千葉県の中核都市でアパートを建築される方の建築コンサルティングを行ないました。
収益性重視のアパートということでしたので、コストパフォーマンスの高いハウスメーカーをご紹介することにしましたが、入居率や賃料を向上させるための方策として、設備の充実を提案しました。
具体的にはペアガラス・洗浄暖房便座・高速インターネット回線・ケーブルTV・BSアンテナ・宅配BOX・室内物干し・追い炊き付きユニットバス・2F、3Fへのシャッター・TVモニター付きインターホンなどです。建築費に対しこれらの設備費は意外に小さいものです。これらの設備の投資額に対する家賃の上昇分は、建物本体の利回りをはるかに上回ります。賃貸斡旋の募集図面にもこれらの設備が反映され、選ばれる賃貸住宅となるでしょう。
最近では、固定電話は引かず携帯電話を使っている若者が多いのですが、インターネットは必需品となっています。入居者にとってみれば新規に固定電話を引いてADSLの費用を負担するよりは、すぐにパソコンに接続できる高速インターネット回線が最初から付いているほうが喜ばれるようです。
このところゲストハウスが市民権を得てきていました。もともとは外国人向けの長期滞在型の安宿といったイメージだったのですが、今では主要な入居者は若い日本人です。部屋は六畳程度で、キッチン・フロ・トイレ・洗面所はありません。そのかわり共用部分に広いLDK、トイレ、シャワールーム、ランドリーが備わっています。入居者との程よい距離の交流を楽しむことができ、またその方が外国人であったりすると、自分の視野が広がるなどの生活を豊かにさせてくれるとの声も聞かれます。
入居者のニーズには、交流を楽しむということもありますが、最大のニーズは賃料にあります。通常都心のワンルームマンションの相場は月10万円位です。ところが、ゲストハウスは都心に近いところにあるにもかかわらず月5万円位の家賃ですむのです。一般的に若者は年収が低く、会社員であっても月の手取りは15万円くらいです。ましてや、フリーターの場合はもっと低くなります。手取り15万円の中から、家賃10万円は無理ですが、5万円だったらという人はたくさんいます。中には10万円の家賃を姉妹や友人で半分づつ負担し、ルームシェアーしていることもしばしばです。
これらの経済合理性が前提のうえで、ゲストハウスのような生活支援付賃貸住宅が成り立っているのです。
また、最近の傾向として企業が元気になり採用も増えてきたこともあり、社宅のニーズがあります。まるまる一棟を会社で所有する時代でもないので、借り上げ社宅として、まとめて何室かを借上げるというものが多いようです。そんな中で、最近人気なのが賄い付きのものです。管理人兼料理人として住み込みのご夫婦がいて、朝食と夕食のお世話や宅急便の受け取り、クリーニングの取次ぎ、お部屋の掃除などのサービス、長期出張の時は新聞紙がポストに貯まらないようにしてくれたりもします。同じ会社の人々ばかりでないので、上下関係はありません。一人で寂しく食事をしなくてもよく、しかも暖かい食事です。コンビニ弁当と即席ラーメンとは違い栄養価も高く健康にも良いので、今賄いが再び人気を取り戻しているのです。食事付きというのは原始的ではありますが、最も生活に密着したサービスと言えるのかも知れません。実は、賄いつきの賃貸住宅は駅から遠く、部屋が小さくても、家賃が相場と比較して相当高く取れる傾向があるのです。このようなソフト付きのものであれば、10年後も勝ち組でいられるでしょう。
4.アパート経営にも出口戦略を
不動産投資のプロである不動産投資ファンドは予め運用期間を想定し、運用期間終了後に売却をします。運用期間はせいぜい5年くらいです。最近では市場の不透明感もあり、1~3年間くらいの運用で考えている不動産投資ファンドも多いようです。
賃貸住宅経営も何年くらい行うのか、そしてその後どうするのかを予め決めておくと良いでしょう。
例えば、40代のAさんは何が何でも10年で借金を返してしまう方針でアパート経営をしています。10年で借金が返せれば、10年先の競争力が衰えてきたとしても何も心配ないし、その時点で何でもできると言うのです。大規模修繕をして経営を延長することもできるし、更地にしてマンションディべロッパーに売却することもできます。ローンが無くなってくると、逆に銀行から借りてくれとお願いに来るので、本物件を担保にして別の土地を買い、そこに賃貸住宅を建てても良いわけです。Aさんは本物件を担保にして別の土地を買って新たに賃貸住宅を建てました。Aさんは資産の拡大を実現しています。
では10年で借金を返済するためにはどうするかということですが、このAさんは徹底的に利回り重視で考え、建築費に対して年間収入が15%以上になる条件で建築を検討しました。その結果、木造か軽量鉄骨のローコストのアパートになりました。したがって、建物には重量感も無いし、屋根もフラット、バルコニーもないありふれたアパートでしたが、初期投資が少なかったため資金の回収を早くすることができました。短期回収型の賃貸住宅経営です。
次に50代のBさんですが、Bさんは5年位を目途に売却を考えています。と言いますのは、相続対策のために父名義で土地を購入して、そこに賃貸マンションを建築したわけですが、医師から父の命はあまり長くないことを告げられ、相続対策のために行なったのです。相続後はあまり借金を残しておきたくないので、相続後は売却の予定です。長期譲渡所得税の対象となるのは5年以上の取得期間が必要なので、できれば6年目以降に売却を考えています。まるで、不動産投資ファンドのような戦略的発想ですが、Bさんのような経営者タイプの土地資産家が増えています。
30代後半で早くも相続を受けたCさんは、少なくとも50年間は賃貸経営を続けたいと考え、広くてガッチリした賃貸マンションを建設しました。50年先ですから出口は考えていません。次世代にも稼いでくれるような賃貸マンションにすることを希望していました。当然、次世代には借金がなくなっており、後継者であるお子様には最高の財産になっていることでしょう。
Aさん、Bさん、Cさんそれぞれ目的が違います。目的や出口に見合う賃貸住宅にすることが大切です。
最後に一言付け加えさせていただきます。収益不動産は収益還元法で価値を図ることになり、流動化がしやすい時代になりました。例えば10年後、15年後に収益力がなくなったと判断したら思い切って処分し、また新たにその時代に合った収益力のある収益不動産に組み変えるという方法もありますのでご検討してみてください。