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地主のための土地活用~いま有効な土地活用方法と実践~

日銀の量的緩和策解除後、金利の上昇が懸念されています。長期の融資を利用する土地活用では、超低金利の恩恵が受けられる最後のチャンスかも知れないと考え、金利の上昇局面における特有の駆け込み需要が顕在化しつつあります。

資産家や投資家は、それぞれの立地に適した土地活用を吟味したうえ、空室率の上昇や在庫の増加、利回りの低下、競争の激化など底流で起きている現象を冷静に見つめながら、果敢に実行に移す必要があります。

第一章       土地活用を取り巻く環境変化

 今資産家・投資家の土地活用に対する意欲が高まってきています。それは、景気回復、地価上昇、金融機関の前向きな融資姿勢に相まって、金利の先高感が背景にあるからです。 

 仮に1億円の賃貸住宅を建てるとします。固定金利で3.5%、30年返済、全額ローンという条件で返済を計算すると、毎月44.9万円、年間538万円、30年で16015万円の支払となります。ところが、仮に金利がさらに3%上がり、6.5%となったとします。返済金額は、毎月63.2万円、年間758万円、30年で22754万円となります。金利は総額で6739万円増えます。

マンションの購入者は金利の上昇よりも、むしろ消費税のアップについて関心があるようですが、仮に消費税が同じく3%上昇したとしても、税金は1億円の3%、すなわち300万円上がるだけです。同じ3%でも金利の影響は20倍も大きいのです。消費税は購入時の一回限りの話で、金利負担は30年にわたるのでこのような差が出てくるのです。

このことをよく理解した資産家・投資家は金利が低く、資金調達のしやすい今、固定金利で出来る限りの融資を受けようと考えています。長期的に見ると、いずれインフレがくれば借入の実質負担が軽くなることを想定に入れています。インフレになれば賃料相場もやはり上昇するだろうと予想できるので、借入が多い方はインフレを密かに望んでいます。借入が最も多いのが国なので、国が最もインフレを望んでいるのかも知れません。

不動産投資信託(J-リート)や不動産投資ファンド(私募ファンド)などの不動産証券化の手法が広まり、現状トータル約10兆円を超える規模に成長し、これら不動産に対する投資資金が市場を活性化させている側面があります。ファンドをマネジメントするにあたり、投資家に対する責任があるゆえ、遵法性・透明性が高くなってきています。そのお陰で収益不動産の信頼性や価値が高まってきていると言えます。かつては何となく胡散臭く見られていた収益不動産が、一つの金融商品として見なされ始めたことによって、流動性が高くなっていることも大きな環境変化の一つです。

一方競争が激しくなり、全体的に旨みが少なくなってきている側面もあります。そんな中で順調に賃貸経営を伸ばしていく方と、逆に苦労されている方の格差が生まれつつあるのも事実です。これからの時代、賃貸経営にも経営的要素を加味し、マネジメントできる方は益々資産を増やし、従来の大家さん的発想の方は縮小を余儀なくされることとなるでしょう。

第二章       土地活用を広げて見る

別表をご覧になってください。土地活用と言ってもその方法は数多く、広義で言えば建てる以外にも、定期借地権で貸す、売却する、現状維持といった具合にその選択肢は様々です。今では資産経営の観点から、「建てる」、「貸す」、「売る」、「待つ」の方法を総合的に検討し、不良資産を優良資産に組み替えていくことが重要になっています。

建てる場合には、自己オペレーションによる事業収入を得るものと単純に賃貸収入を得るものに分けられます。ノウハウを研究し単独で事業するケース、FCに加盟するケース、FCとの共同事業の3つの形態があります。最近では健康、癒し、美容などをテーマとする業態の進出が活発で、リラクゼーション系が一種のブームともなっています。これら事業の利回りは比較的高く、投下資本の回収も数年以内のものが多いようです。

自分で事業を行うにはリスクがあると思う方は、賃貸収入を得ることに専念します。アパート、マンション、ビル、倉庫などが最も一般的で、市場ボリュームが大きく比較的リスクが少ない安定したものと言えます。一般賃貸業では物足りない方は、ロードサイドでの店舗やスポーツクラブ等商業系の活用を検討してみてください。特定の事業会社と建設協力金を得て建て貸しするなどによって、初期投資資金を抑えることも可能です。ただし、賃貸人の運営が順調である場合には魅力的な賃料が得られる一方、万が一撤退となったときなどのリスクもあるので、契約の中身や借り手を吟味する必要があります。

定期借地権で貸すことも土地活用の一つです。コマーシャル系なら事業用借地権、マンション系なら建物譲渡特約付き借地権、戸建分譲には一般定期借地権との相性が良いでしょう。土地そのものを貸すことによる事業なので、借入する必要や、煩わしい管理も必要としないのが特徴です。平成48月以降法的に整備されたので、従来あった地主と借地人間のトラブルが格段に減少しています。

売却にも色々な手法が開発されています。単純な換金目的が一番多いのですが、買換えや交換といった税務対策を加味した手法もあります。また、保証債務の履行のための売却や不良債権処理に伴う売却など、譲渡税の免除を利用した手法もあります。不動産特定目的会社を通した売却によって、オフバランスや証券化することも増えてきました。法人の所有の場合では重い法人税を回避するために、思い切って会社ごと売却する不動産M&Aも注目されています。

また土地活用には「何もしない」や「リモデリング」、大きな投資を伴わない「仮設事業」も大変重要な選択肢の一つであることを付け加えておきます。

成功の鍵は、立地との兼ね合いです。その土地の特質や市場を良く知ることが成功への第一歩となります。 

土地活用の分類.pdf へのリンク

第三章       活用方法別利回りの検証

土地活用を選択するにあたっては、立地との相性が重要だという話をしましたが、最も利回りが高い活用方法が、最も相性の良い土地活用と言い換えても良いでしょう。

別表の利回りは目安を示したもので、当然立地や建物の内容によって変わります。また、あくまでも投下資本(ここでは建築費用総額、土地価格は含まれていません)に対する年間の売上を示しているだけで、そのオペレーションや維持に関わる費用は反映されていないので、単純な比較はできません。本来ならば、経費を除いた収支を投下資本で除したネット利回りで比較するべきものですが、比較的情報の集めやすい単純利回りで比較しています。

居住系は概ね9%~15%ぐらいの単純利回りとなっています。従来のように、単純なシングル向け、カップル向け、ファミリー向けといったカテゴリーだけではなく、超高級賃貸やデザイナーズ賃貸、ウイークリー、学生会館、ペット対応、外国人向けなど対象を絞ったコンセプトを持った賃貸住宅も目立つようになっています。市場が成熟している物販や飲食業界では早くからターゲットを絞った専門店の人気が高いように、賃貸住宅においても専門店的な賃貸住宅が増え、仮住まい的発想から所有よりもむしろ賃貸を好む選択的賃貸人が増えていることも、その傾向に拍車をかけています。

シニア系事業も注目されています。少子高齢化の流れから見れば当然の帰着です。介護付きのものから、健常者向けまでバリエーションが豊富にありますが、基本は居住系の賃貸住宅と変わりません。運営を任せて部屋貸しに徹すれば賃貸経営そのものです。表の利回りが高いのはオペレーションコストを含んでいるからです。オペレーションコストを除けばほとんど賃貸住宅と変わらないか、オペレーションが悪ければ賃貸住宅を下回る場合もあります。運営会社に一括で借りてもらい、ノウハウが必要なオペレーションは運営会社にお任せするのが良いと思います。その場合、運営会社の信用力がものを言います。高く借りてくれたのは良いのですが、しばらくしたら破綻といったことがないように運営会社を選ぶ目利きが必要となります。

商業系、ホテル系、オフィス系、温泉施設系事業についてもオペレーションコストによって実質利回りが左右されます。温泉系施設事業は高い利回りを期待することができ、投下資本の回収も短かったのですが、競争の激化によって大型化や高級化などの差別化が進んでいます。 

          活用方法別単純利回りの目安

利回り=初年度売上/初年度投資
活用分野 活用方法 利回り(%)
居住系事業 超高級賃貸 13~15
デザイナーズ賃貸 10~12
ウィークリー賃貸 9~11
ワンルーム&コンパクト賃貸 9~11
学生賃貸 9~11
ペット賃貸 10~13
スケルトン・インフィル型賃貸 10~13
コンバージョン賃貸 10~13
シニア系事業 介護付有料老人ホーム 25~30
住宅型有料老人ホーム 15~20
健康型有料老人ホーム 15~20
グループホーム 25~30
商業系事業 ネイバーフッド型ショッピングセンター 15~20
パワーセンター 15~20
都市型ファッションビル 20~25
ホテル系事業 シティホテル 40~50
レジャーホテル 35~40
オフィス系事業 オフィスビル 12~15
温泉施設系事業 スーパー銭湯 60~65
日帰り温泉 70~75
※本利回りはあくまでも都心近郊における目安を示したものです。
※利回りは初期投資額を初年度売上で除した単純利回りで、支出金額が異なるため、単純な比較は出来ません。

第四章       比較検討することが大切です

 具体的に土地活用を検討する場合には、各社の提案を受け比較することが、最も簡単な検討方法です。ポピュラーで市場ボリュームの大きい賃貸住宅を例にとってその検討方法をご紹介します。

別表の賃貸住宅検討表をご覧ください。どこにでもあるような埼玉県の郊外での土地活用のケースです。住宅街であることと駅からの距離も離れているので、賃貸管理会社のアドバイスもあって3社とも2LDKのプランを計画しています。A社は4階建てのスチールハウスで24戸、B社は3階建ての2×4工法で21戸、C社は3階建てのPC工法で15戸配置しています。A社は容積を最大限消化するために、4階建てを提案していますが、日影規制により敷地の南側に目一杯寄せています。将来南側の駐車場に建物が建った場合日当たりが悪くなる恐れがあります。また、駐車場の設置率が54%となっていますが、郊外立地のため100%以上は必須条件です。ちょっと欲張りすぎのプランかも知れません。B社は敷地を有効に使い、かつ日照を確保するために、南と西にL字型に配置しています。駐車場設置率は100%を超えています。C社は規格型の建物を無造作に配置し、余った敷地を駐車場に使っています。容積率の消化が課題です。

              賃貸住宅検討表の事例
建築場所 埼玉県郊外                              (単位;万円)
A 社 B 社 C 社
建築計画 構造 スチールハウス 4階建て 2×4工法 3階建て PC工法 3階建て
法定耐用年数 19年 22年 47年
プラン 2LDK 24戸 2LDK 21戸  2LDK 15戸 
配置 南側、北側駐車場 L字型 南側駐車場 南側、北側駐車場
駐車場設置率 54% 105% 126%
基礎補強 杭工事 別途 地盤改良工事 込み 杭工事 別途
外観デザイン 規格品 フリー デザイナーズ系 規格品
建築費 専有面積 (A) 400 320 240
建築費 (B) 25,000 21,000 17,000
坪単価 (B/A) 63 66 71
戸当たり単価 1,042 1,000 1,133
利回り 年間売り上げ (C) 2,200 1,800 1,300
戸当り賃料 7.6 7.1 7.2
表面利回り (C/B) 8.8% 8.6% 7.6%
維持費 固定資産税
管理費
撤退費用
不安点 南に寄せて配置している 敷地に収まるか 南に寄せて配置している
開発費用が別途 音の心配はぬぐえない 開発費用が別途

建築費の比較はA社が坪63万円、B社が坪66万円、C社が坪71万円と法定耐用年数と連動するかたちで高くなっています。戸当たり単価が最も安いのがB社、次にA社、最も高いのがC社となっています。戸当たり賃料はA社が一番高く、C社が2番目、B社が3番目となっています。
そこで肝心の利回りですが、A社8.8%、B社8.6%、C社が7.6%となっています。A社の建物にはエレベータが付いていますので、その電気代や法定点検費用や固定資産税などの維持費を差し引くと、B社の実質利回りが一番高くなります。

また、A社とC社は開発申請費用と開発工事費が別途扱いになっているのが気になります。確かに行政指導によって思わぬ出費がかかりますが、予算から外されると事業計画に狂いが生じる上、あとから追加予算について業者とのトラブルが予想されるので、総予算で比較する必要があります。会社によっては本体工事の粗利を低くし、見せかけは安くなっているものの、追加工事の粗利が高くトータルでは高い買い物になるケースも見られるので注意が必要です。

もちろん品質の比較も大切です。実際の耐用年数(法定耐用年数はあくまでも税金用のもの)や修繕費が少なくてすむものであるかチェックしてください。本ケースの比較では総合的に判断すると、B社の提案が最も優れていると思われます。


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