第4回 双方代理
不動産の仲介は不思議なもので、売主の代理人をやりながら買主の代理人をも行っている。通常売主側からはなるべく高く売ってほしい、買主側からはなるべく安く買ってほしいという依頼内容である。全く逆の依頼内容を一人の人間が受けて、応えられるのであろうか?ヘタをすると双方の依頼者から「どっちの見方なんですか?」と責められかねない。
裁判では原告と被告とそれぞれ代理人が付き依頼者の意向に添った論証を行い、裁判官が双方の言い分を聞き最終的に判決を下す。原告の代理人、被告の代理人、裁判官と三者の役割が明確である。
ところが不動産の両手仲介の場合、売主の代理人、買主の代理人、裁判官の三者の役割を一人が演じることになる。これは相当レベルの高い人間でしかできない芸当である。視点を三方向から常に見比べながら話をまとめていかなくてはならない。
専任媒介での仲介を行う場合はレインズへの登録が義務付けられているが、売主側と買主側がそれぞれに仲介業務を行うことを国土交通省が推奨しているということでもある。いわば共同仲介を推奨しているのであるが、売主・買主の双方から手数料を期待する仲介業者には評判が悪いようである。
以前借地人との交渉で悩む地主から底地の売買の依頼を受けたことがある。親世代から通算して30年間裁判を繰り返していたのである。私は借地人を訪問し趣旨を伝え、借地人の代理人にもなった。従来どおり、弁護士同士で話し合いをしてもいいのだが、調整できず喧嘩別れになるのが見えていたから、あえて双方の代理人を買って出たのである。
これ以上揉めることは双方とも得策でないことは分かっている。ただし各論の価格になると今まで調整できなかったようであった。借地人はそこに賃貸マンションの計画を考えていたので、不動産鑑定士に賃貸マンションを開発して得られる賃料から逆算して土地の価格を評価してもらった。その価格を売買価格と定め、双方の顔色を見ることをしなかった。その結果、30年戦争が解決し底地の売買契約が成立した。
このように可能な限り客観的に調整できるのであれば双方代理も有効に機能する。

