第10回 お役立ち(前編)
不動産の仲介業者の商品は情報である。IT時代となった現在はたして情報が商品といって良いのだろうか?
先日、私は生命保険会社の担当者個人(A子さん)が主催する銀座地域の交流会に参加した。内容は企業支援のコンサルタントの基調講演と交流懇親会であった。A子さんの人脈を参加者同士で活かしてくださいという狙いで行われたものである。A子さんは本来保険を販売することが仕事だが、商品そのものの価値に人脈提供という付加価値を付けている。
A子さんは「少し遠回りかも知れませんが、皆さんにお役立ちをすることから始めることが大切だと思います」と話していた。通常、会社が企画して行うことは多い交流会であるが、A子さんのように一担当者が会社の応援を得ながらも個人的に行ったことは素晴らしいと思う。
基調講演の講師から、「交流会では自社のアピールではなく、相手が何をやっているのかを聞き、自分が提供できる情報を与えてください」との助言があったが、これもお役立ちの精神と一致する言葉であった。
私が大手ハウスメーカーの新人のとき、現場で住宅の販売を行うにあたり、現在の大手ハウスメーカーの代表取締役であるBさん(もちろん若いころトップセールスマン)に質問した。「どのようにしたら売れるのか、一つだけ教えてください」そうするとBさんは「住宅の営業は商品説明やテクニックでは売れません。最初の一年間はとにかくお役立ちすることだけを考えてやりなさい」というものであった。
私は売りつける姿勢は一切見せることなく、とにかく「お役立ち」という言葉を胸に秘め住宅営業を行った。この言葉を忠実に守ったあかつきには、やはり同じくトップセールスマンという勲章を持って本社に戻ることができた。
不動産の仲介も同じである。物件情報の提供とその物件のアピールだけをしていてもお客様は信頼してくれないし、成約にならない。お客様が困っていることや不安に思っていることを真剣になって受け止め、「お役立ち」したいという姿勢を自然にだせるようになれば、自然と結果がついてくる。次回はそのお役立ちの中身を紹介する。

