ふくちゃん・りなの不動産投資学校

第8回 今までの不動産投資動向について

◆ゲスト 株式会社東京アプレイザル 代表取締役 芳賀則人

里奈 (ゲスト紹介)
株式会社東京アプレイザル 代表取締役 芳賀則人(はがのりひと)先生 は 不動産鑑定士です。
26年の経歴があり、現在までに数千件の鑑定評価の実績をお持ちで、主に金融機関・税理士・弁護士・地方公共団体から仕事をいただいております。
先生は業界の発展のために、不動産実務学校や相続アドバイザー養成講座・無常塾などを主催し業界に多くの人材を育てております。
平成12年よりNPO法人相続アドバイザーズ協議会を設立され、「相続の専門家」を育てることにも注力されています。

福田
それでは、本日のゲストの芳賀先生ですが、日本を代表する不動産鑑定士の一人です。
芳賀先生のすごいところは、芳賀先生の回りには、志が高くかつ思いやりのある人ばかりが集まっているということです。芳賀先生の主催する勉強会やセミナーに参加するとそのことが実感できると思います。
芳賀先生、こんな紹介でよろしかったでしょうか?

福田
本日のテーマは「今までの不動産投資動向について」ということで、過去の話が中心です。来週には今後の動向を紹介してもらうことになっています。
ファイナンシャルアナウンサーの里奈さんに質問をしていただき、芳賀先生が答え、私が解説を加えていきます。

里奈
それでは、さっそく最初の質問です。
1.不動産投資の個人的感想
まずはズバリ。不動産鑑定士として今の不動産投資ブームについて、正直どう思いますか?
不動産鑑定士の立場から見て、率直なある意味厳しめの感想を期待したいところですが?

芳賀
「金持ち父さん」という本が売れ始めてから不動産投資ブームが起こっていると思います。まずはワンルームマンションの投資から競売物件や不良債権物件に行きさらに大型の1棟ものの賃貸マンションやオフィスビル投資へと進んでいます。プロから素人まで不動産投資にのめりこむ姿は個人的にはもの悲しい感じがしています。不動産オーナーになるというのは見た目は格好良いのですが、管理や家賃の収支を考えると相当な苦労を伴います。又、買った値段がいつまで通用するのか。金利の動向で急反転(下落)するリスクもあります。
所詮、ババ抜きゲームで誰かがやられる構図ですから。

福田
不動産鑑定士らしく、辛目の感想ですね。「色々な方の意見を幅広く聞き自分で判断する。」
ということが大切なので、今日は芳賀先生には辛目の意見を思ったままお話いただくようにお願いしています。

里奈
2.これまでの地価の推移と最近の動きの特徴
まずは、地価の動向ですが。今は地価が上がっているのですか?下がっているのですか?
首都圏の都心、郊外、商業地、住宅地に分けここ10年くらいの推移とその特徴をかいつまんでご紹介ください。
また、底値を脱したとの報道に偏りはないですか?

芳賀
東京都、横浜市、川崎市といった本当に都心部に近い都市は確かに強含みになっています。
この現象は平成16年春ぐらいからです。その前の10年間は全く冬の時代です。下げ続けていました。
私が住んでいる練馬区を例にとってもこの1年間の上昇率は公示価格ベースで7~10%ですが実勢は20%近いと思います。土地100㎡付きの建売住宅が5500万から6500万円になりましたので。
土地が上がるときというのは、毎月少しずつ上がるのではなく一晩寝て起きたら500万円上がっていたという感覚です。ちょっと大げさですが。
これは、どうしてかというと、ほとんどが不動産業者間の転売(転がし)だからです。あっという間に上がるのはそれがからくりです。だから本当に実需かどうか、怪しいものです。不肖私も昭和バブルではマンションころがしに手を染めた経験がありますので大体の構図は分かります。
 特に世田谷区、目黒区、大田区などの城南地区(高級住宅地の多い地域)は2年前までは200万ぐらいでしたが、坪300万が当たり前になってきました。自由が丘では400万円の取引も多くなりました。
ところが、郊外は全くといって良いほど上がっていません。神奈川県の茅ヶ崎、藤沢といった湘南でも下げています。埼玉県でも都心から30キロを超えると下げています。
底値を脱したのはごく一部で日本というくくりで見ると、これからも地価は弱含みで進むと考えた方が無難でしょう。先ほども言いましたが、上がったといってもエンドユーザーが本当に坪300万円で買えるほど、落ち着いたとは私には思えませんが。

福田
人気地区だけが上がり、それ以外ではまだまだということですね。景気が良くなるとまずお金持ちが好むエリアが上がるんですね。
注意しなくてはならないのが、業者間取引で上がっているということです。業者が取得して20%の利益を上乗せして転売する。ということがもはや2~3回繰り返されています。
20年前のバブルとなんだか似ていますね。


里奈
3.収益還元法について
不動産の価値は収益によって決まる部分の割合が高くなってきています。専門的には収益還元法と言われていますが?聴取者の方に分かりやすく説明してください。
その収益の中身が大切だと思います。収入と支出に分けとりわけ気をつける点はどんなところでしょうか?

芳賀
収入は家賃収入のことです。住居系のマンションは新築時が最高の状態ですので、古くなれば家賃が下がることを前提に考えます。又、空室率も10%~15%程度は考えるべきです。支出は特に中古の場合、修繕費が多額になる可能性もありますので、いわゆる建物のデューデリ(詳細な調査)が必要です。外壁・屋上防水は言うまでなく配管・電気等の設備の更新時の目安をつけることです。不動産は意外と金食い虫であることの認識です。

福田
意外と金食い虫という言葉にドキッとしますね。

里奈
収益還元法は期待利回りしだいで価格が大きく変わりますが、この期待利回りというのはどんな要素で決まるのですか?また、この期待利回りの相場というのはあるのですか?

芳賀
投資家が物件を購入するときに年間の賃料収入から必要経費を控除した後に残る金額を純収益といいます。
投資家はその純収益をどのくらいの利回りで還元して買えば採算が取れるかなと考えるときの目安を還元利回りといいます。ですから価格を決めるときの重要な要素です。
この利回りは物件によって全て違うと考えます。日本で最も利回りが低くても投資家が投資してくれる地域が丸の内、大手町、銀座などでしょう。郊外に行けば行くほど、利回りが大きくなるのが通常です。利回りはリスクとの見合いです。リスクの大きい物件ほど利回りは大きくなります。つまり元本の下落リスクを早めに家賃収入で回収しようとしますので、買う価格は低くなるのです。

福田
不動産業者の方はそこのところを良く理解していないので、何でもかんでも6%という感じでとらえているようですが、本来は
老朽化、空室、家賃の下落などのリスクを吟味して期待利回りを決めていくんですね。

里奈
4.売却益について
収益不動産は長期的安定的に収入を生むものだとされていますが、最近の不動産投資ブームでは短期間に売り買いされる売却益狙いの風潮が目立ちます。
不動産投資は持っている間の賃貸収入と売った時に得られた売却利益の二つがありますが、どちらかと言うとプロの不動産投資ファンドや不動産業者は売却利益中心に考えているように見受けられますが、将来の売却益を視野に入れた不動産投資をどのように思われますか?

芳賀
この2~3年のJリート、私募ファンド等の高収益は転売利益によっているのは事実です。マンションデベが、エンドユーザーに売らずにリートに一括売却してあっという間に売り切った話は普通になっています。でも私は長くは続かないと思います。買ったリートも後では賃貸に出します。それが思うように行かなければ、簡単には買ってくれなくなります。ゲーム感覚になってきた以上、どこかで破綻するところが出るでしょう。
不動産投資はあくまでも家賃収入を中心にして考えることが重要です。もし転売益が得られたとしたら、それは神様からの贈り物と考えましょう。

福田
プロの投資家は不動産を取得した時点で転売益があるものを取得します。「利は元にあり」という商売の格言どおりに投資行動をしているわけです。
一般投資家は長期に保有し、安定収益を得ていくという発想が重要ですね。


まとめ

1. 値上がりしているのは収益の上がる場所や高級住宅地、郊外はいまだに下がっています。
2. 今は不動産投資ブーム。金利の上昇などによって地価の反転が考えられ、誰かがババを引くこともある。
3. 収益還元法による値付けはリスクとの兼ね合いで決まります。リスクが高ければ利回りは高くなっています。
4. プロの不動産投資家は短期所有の転売狙いが多い。一般人は長期に保有することによって安定収入を得ることが基本です。