ふくちゃん・りなの不動産投資学校
第15回 資産の組み換えによる相続対策
◆ゲスト 税理士法人タクトコンサルテイング 代表社員 本郷 尚
里奈 (ゲスト紹介)
本郷尚先生は税理士法人タクトコンサルテイング代表社員、創業以来30年資産税専門の会計事務所として、決断と実行をサポートするコンサルティング会社を主宰されています。個人の相続、譲渡、資産の活用、法人の株式問題、M&A、企業再生、等々の資産税に特化した専門家集団の代表者です。
主な著書は「不動産組み替えのすすめ」「継ぐより分ける相続」などで、30冊を超える執筆をされています。
福田
税理士、不動産関連の業界で本郷先生を知らない人はまずいません。間違いなく、日本一著名な税理士と言っても過言ではありません。
私自身も本郷先生から数多くのことを学びましたし、大変、尊敬する先生です。
資産税というと答えが無い分野で、100人の税理士が同じ相続税の申告をしたとしたら、100通りの答えがでてくるんですよ。それだけ難しい税務なんですね。
また、相続人のコーディネーターとして、揉めずに分割し、期限までに納税を行い、節税の提案をし、さらには相続後の資産の運用までアドバイスするとなるとまず一般の会計業務中心の税理士では不可能です。
本日のテーマは「 資産の組み替えによる相続対策 」ですが、ファイナンシャルキャスターの里奈さんが質問し、本郷先生が答え、私が解説を加えながらすすめてまいります。
里奈
1.まずは税制上の優遇措置についてお伺いしたいと思います。特定資産の買換え制度とはどのような制度でしょうか?個人・法人に分けて、簡潔にご紹介お願いします。
本郷
これは10年以上所有している事業用資産(駐車場、貸地、お店、事務所、賃貸住宅等の収益を生んでいる不動産)を売却して、売却した年の翌年12月31日までに、事業用資産の土地建物に買換えた場合には、買換えた金額の8割までは、課税を繰り延べられますという制度です。
時限立法で、平成20年12月末までの制度です。
具体的に言えば、個人の場合1億円で売って、1億円で土地建物に買換えたら8,000万円までは課税がされません。
2,000万円に20% 約400万円譲渡税が課税されます。法人の場合でも同じです。法人は事業用であるかどうか問われません。
法人は暦年ではなく事業年度でみます。
買換え、組替えをする資産の種類は問いません。土地を売って、土地又は建物、償却資産に買い替えはOKです。場所も問いません。東京⇒東京、郊外や地方⇒東京 東京⇒郊外、地方もOKです。
福田
この制度は租税特別措置法の中で謳われ、政府の景気対策の一つと考えても良いと思います。平成20年12月末までの期限付きであることに注意が必要です。
買換え特例もたくさんの種類がありますが、使い勝手の良い15号の規定のみ土地の所有期間が10年以上でかつ、期限が他との規定のように平成23年12月末ではなく3年短くなっているので間違えのないようにしなくてはなりません。
里奈
2.どのような方が資産の組み替えに向いていますか?また、資産の組み換えのメリットとデメリットをいくつかご紹介ください。
本郷
都内の貸地、駐車場、郊外や駅から離れた古アパート、駐車場、あるいは工場、店舗、事務所等で「収益力が低い」又は「将来性が少ない」等の土地を駅前や立地の良い場所へ、又は土地を売ってアパートやビルの建物の至近とするケースがあります。
やはり収益力が上がります。
デメリットとしては、買換えた建物償却資産はその後減価償却することができません。
さらに、将来売却する時は、取得価額は少なく、次回売却する時は、原価がほとんどありません。
買換え制度が、課税の繰り延べというのはそのせいです。
福田
課税の繰り延べということなので、将来すぐ売るとなると短期譲渡所得となるので、繰り延べた分の税率も20%が39%になるので注意が必要ですね。
今のところ譲渡税は長期で20%なんですが、過去には39%という時代もありました。譲渡税が20%の今のうちに課税の繰り延べをしなくて、払いきってすっきりしておくという考えもあります。
ただ、手元のキャッシュが増えるので買換え特例を希望される人が多いようです。
里奈
3.本郷先生も大家さんとお聞きしておりますが、本郷先生自身の賃貸住宅経営に対する哲学というと大袈裟ですが、思いみたいなものはありますか?
本郷
賃貸住宅と言っても、商売です。「大家か店子に貸してあげる」なんて考えたらとんでもありません。お客様に借りてもらっている 「ありがとうございます」という気持ちが大事です。
具体的に言えば、建物、設備は常にきれいにお客様に不満をもたれないように満足、納得して貰っています。大家さん、オーナーではなく、経営者であるということです。不動産管理会社の人に対しても「ありがとうございます」という姿勢です。
福田
貸し手市場から借りて市場に移行してきて、はじめて本郷先生の賃貸住宅も経営だという考え方が受け入れられてきました。
本郷先生は賃貸経営だけでなく、その他のビジネスの部分でも他人への感謝の気持ちを忘れることはありません。
常に感謝する気持ちが「おごり」を排除しつづけ、多くの方々から愛されているんだと思います。
里奈
4.最後に聴取者の皆様へのアドバイスをお願いいたします。
本郷
賃貸経営も商売です。創意工夫して、入居者の満足を追及するビジネスと考えるといろんなアイディアが出てきます。自らが手がけると、面白いと思います。お金をかけなくても付加価値が生まれます。
里奈
もう一つ、資産の組み替えや相続の観点からアドバイスをお願いします。
福田
賃貸経営だけに限らず、お客様の満足を得るための創意工夫は重要だと思います。創意工夫の中にはお金のかからないものがたくさんあります。例えばネーミングだけでヒット商品が生まれますよね。
まとめ
1. 平成20年12月末までが、事業用資産の買換え特例の期限です。景気対策の必要性も薄れ、不動産のミニバブルといわれている状況では延長される可能性は極めて低いと思います。後1.5年しかないので、この機会に不良資産を優良資産に組み替えることを検討してみてはいかがでしょうか?
2. 買換え特例は建物の減価償却が使えなくなることや、次回売却するときの譲渡税が高くなります。したがって、将来を見越して買換え特例を使うか使わないかの判断が必要です。買換え特例を使うと手持ち資金が増えるので、運用がうまくできる人は積極的に活用してみましょう。
3. 賃貸住宅はサラリーマンでも経営者になれる数少ない事業です。賃貸管理会社や入居者に感謝の気持ちを忘れないことが成功への近道のようです。