ふくちゃん・りなの不動産投資学校
第14回 不動産投資による相続対策
◆ゲスト 税理士法人タクトコンサルテイング 代表社員 本郷 尚
里奈 (ゲスト紹介)
本郷尚先生は税理士法人タクトコンサルテイング代表社員、創業以来30年資産税専門の会計事務所として、決断と実行をサポートするコンサルティング会社を主宰されています。個人の相続、譲渡、資産の活用、法人の株式問題、M&A、企業再生、等々の資産税に特化した専門家集団の代表者です。
主な著書は「不動産組み替えのすすめ」「継ぐより分ける相続」などで、30冊を超える執筆をされています。
福田
税理士、不動産関連の業界で本郷先生を知らない人はまずいません。間違いなく、日本一著名な税理士と言っても過言ではありません。
私自身も本郷先生から数多くのことを学びましたし、大変、尊敬する先生です。
資産税というと答えが無い分野で、100人の税理士が同じ相続税の申告をしたとしたら、100通りの答えがでてくるんですよ。それだけ難しい税務なんですね。
また、相続人のコーディネーターとして、揉めずに分割し、期限までに納税を行い、節税の提案をし、さらには相続後の資産の運用までアドバイスするとなるとまず一般の会計業務中心の税理士では不可能です。
本日のテーマは「 不動産投資による相続対策 」ですが、ファイナンシャルキャスターの里奈さんが質問し、本郷先生が答え、私が解説を加えながらすすめてまいります。
里奈
1.本郷先生は2001年4月、都心の地価が底値となったときに、週間住宅新報社より「資産は都心に回帰する-不動産組み替えのすすめ-」という先見性に富む本を発行されました。そろそろ底値だなあと予測して本を執筆されたのですか?
本郷
地価が底値かどうか、又は高値になったからで判断したのではありません。
「不動産の組替え」をすすめたのは、不動産の価値は土地の面積で評価されるのではありません。
収益不動産であれば、家賃の利回りで判断する、いわゆる収益還元法です。しかもその収益力は長期的に安定していて、将来収益力が上がるかもしれないという「家賃の質」を問題にしたのです。
結局、不動産は都心に、駅に回帰すると申し上げました。
さらに、住宅地は環境価値で決まると言いました。人気沿線、イメージの良い場所が価値ある不動産ということを述べたのです。
福田
この本は資産家にとって衝撃的な本でした。土地はよっぽどのことが無い限り売るものではない。といわれている中で、投資家の発想に切り替え、「もっと良いものに組み替えるのであれば、売ってもいいんだ」と気付かされた本なんですよ。
本郷先生は税制上の不備からの提案だったのかも知れませんが、不動産投資ファンドやリートの始まりと時を同じにしているので、まさに時代の流れに合致した提案だったと言えます。
いまだに土地いくら、建物いくらで評価する国の考え方は時代遅れなのですが、それをうまく逆手に取った提案とも言えます。
里奈
2. 本の中で、「資産組み替えの目的は収益力確保と相続税の節税」と述べられていますが、具体的にはどのくらいの効果が期待できるのですか?簡単な例でご紹介いただけますでしょうか?
本郷
更地や貸地、駐車場では収益力がほとんどなく、固定資産税、相続税の負担も最も重いのです。
仮に、1億円の土地を売却して1億円の投資不動産に組替えたとします。収益力は年率6%だとすれば家賃が年間600万円生まれます。
さらに、固定資産税が経費化されたり、居住用で利用した場合には6分の1に減額されます。
相続税では1億円の財産が5,000万円以下で評価されることもあります。
福田
私のところでは不動産にもROA(総資産利益率)の考え方を応用しています。
今のケースですと、ゼロもしくはマイナスが6%になったことになります。
将来、支払うべき相続税もマイナスの資産だとすると、ROAはその分下がることになるんですが、評価が下がり節税効果が生まれるとROA(総資産利益率)も上がることになるので、一挙両得ですね。
里奈
3.本郷先生は収益還元法と相続税評価とは矛盾していると常々おっしゃっていますが、矛盾点をスバッと指摘していただけますか?
本郷
相続税では賃貸用で利用される土地や建物を評価する時に借家権割合を控除します。
土地であれば更地の評価から貸家建付地として18%~21%控除されます。
建物であれば固定資産税評価減が借家権割合30%を控除されます。
反対に空室であれば土地も建物も空地、空室として評価されて最も高い評価になってしまいます。
満室で家賃がたくさん入っている収益力のある不動産が相続税評価上最も安く評価されます。反対に、空室の建物は相続税法上最も高く評価されます。
ここでも、税法は空室空地の建物と土地が最も高いと考えているのです。市場の考えと反対です。
福田
国は更地に一番価値があると考えるんですね。だから賃貸住宅が建っていると土地の評価を18~21%下げてくれ、入居者がいると家賃が入っているにもかかわらず、立ち退き料相当の評価として建物の評価を30%も下げてくれるんですよね。
国が収益力を評価しないのであれば、資産を収益不動産にドンドン組み替えていったほうが相続税上得ですね。
価値が低くて相続税評価の高い郊外の土地は処分し、収益が上がり相続税の低い都心の収益不動産に組み替えることは、極めて合理的な判断と言えます。
里奈
4.不動産投資による相続対策ということで、本郷先生がご指導されたクライアントの中での成功事例をご紹介してください。
本郷
3年前のことです。郊外の地主さんが300坪の駐車場を3億円で売却して、都内の駅前のビルを2億円の借入金をして合計5億円で購入しました。事業用資産の買い換え特例を使いました。家賃は年間3,000万円位で、借入返済が1,000万円、手取り2,000万円になりました。
相続税評価は借入金2億円がマイナスになるので、事実上ゼロ評価です。
家賃収入が上昇して、しかも、相続税対策です。しかも、買換え、組替えした時期が良かったので、3年前の5億円のビルは7億円~8億円と言われています。
家賃も上昇気味です。
福田
私自身のクライアントでも同じような事例がたくさんあります。
こんな美味しいお話であるにもかかわらず、実行する方が少ないことが残念ですねえ。
不動産とは収益があってはじめて価値があるんだという認識を持っていただきたいですね。
収益を上げない土地、事業に向かない土地(宅地分譲も含む)は単なる金くい虫なんですよね、本郷先生。
本郷
不動産は税金の塊です。買う時の税金、持っている時の税金、売る時の税金、相続する時の税金とあらゆる場面で税金がかかってきます。
だからこそ、収益があがる不動産でなければいけません。将来の値上がりを期待して、ただ持っているだけという時代ではありません。
不良資産は手放し、優良資産に組み替えることも考えてみてください。
福田
その優良資産というのは、一言で言えば収益を生む資産のことですよね。税金が少なくて、収益を産んで、いざとなれば取得した価格よりも高く売れる資産に組み替えることによって、相続対策のかなりの部分で問題が解決します。
まとめ
1. 不動産の価値は収益還元法で考えることが当たり前の時代となってきました。収益を生む資産が価値ある資産です。単なる土地を持っているだけでは金食い虫なので、相続税の節税と収益力の確保の両方を享受するために資産の組み替えを検討してみましょう。
2. とは言ってもなかなか、所有する資産を売却することに抵抗があるようです。その場合は所有する不動産を担保として活用し、不動産投資を行うという考えもあります。
3. 相続というのは、分割・納税・節税に分けて考えます。節税を優先するあまりに、肝心の遺産分割や納税に苦慮するケースが良く見られます。不動産投資の場合には、資産が増えるので分割には影響が少なく、換金性も高いので納税にも便利で、評価をトータルで70~80%も下げられこともあるので、相続対策のウルトラCとも言えます。