ふくちゃん・りなの不動産投資学校

第11回 差別化戦略 コンセプト賃貸住宅について

◆ゲスト 夢工房建築設計事務所 白沢宣夫(一級建築士)

里奈 (ゲスト紹介)
1993年 夢工房建築設計事務所 設立、スターツ・三井ホーム・ミサワホーム・アパマンショップなど大手メーカーの住宅やマンションの設計を手がけた経験を活かし、幅広く活躍されていらっしゃいます。
依頼主の意図を的確につかみ、依頼主と伴に楽しみながら夢やテーマを形にしていくことをモットーとされています。


福田
本日のゲストの白沢先生ですが、最初にスターツに入社され、最初研修の意味も含め、賃貸住宅の営業をやった経験があるんですね。だからなのか分かりませんが、依頼主の意図を的確につかむことができ、それをスピーディーに形にできるんですよ。
プランニング力は当然抜群ですが、何と言っても人柄の良さに定評があり、紹介やリピーターの多い設計士です。

福田
本日のテーマですが、「差別化戦略 コンセプト賃貸住宅について」ということです。
賃貸住宅経営も本格的な競争時代に入ってきたので、経営者と同じく戦略が必要になってきたんですよね。そこで、本日は競合との差別化についてお話をしていただきます。
ファイナンシャルアナウンサーの里奈さんに質問をしていただき、白沢先生が答え、私が解説を加えていきます。

里奈
1.最近コンセプト賃貸住宅という言葉を聞くようになってきました。コンセプト賃貸住宅ってそもそも何ですか?

白沢
はい。特定少数にテーマを絞った企画付の住宅を造る事です。例えば、ペットを飼っている人だけの賃貸住宅である「ペット共生賃貸住宅」や日曜大工・工芸等の趣味を持った人の為の「サービスルームのある賃貸住宅」、また、ミュージシャンの為の「防音室のある賃貸住宅」、その他、バイク好きの為の「ガレージ付き賃貸住宅」、「家庭菜園付き賃貸住宅」などがあります。

福田
これらテーマの絞られた特定の入居者のニーズに沿った賃貸住宅がでてきた背景は三つあります。
一つ目には、競争が激しくなってきたので、他と競争にならないところで経営を考えるオーナーがでてきたこと。
二つ目には、他と競争にならないことから、家賃が高めに取れるようになってきたこと。
三つ目には、立地や価格で勝負するのではなく、企画で勝負しようと考えるオーナーがでてきたことです。
小売店についてもスーパーマーケットから専門店街へ移行しつつありますが、賃貸住宅も成熟期に入ってきたので入居者の個別のニーズに答える賃貸住宅が増えつつあります。

里奈
なるほど。賃貸住宅も専門的になってきているんですねえ。
例えば、例としてペット共生住宅の事例などご紹介していただけますか?

白沢
はい、3階建ての賃貸マンションを市川市で建てたときの事例を紹介しましょう。
一階は庭付きで大型犬を可にし、2階は小型犬専用に、3階はロフトを設けたところにキャットウォークを設け、ネコちゃん用にも対応しました。
幸い一階の店舗には獣医が入ってくれたので入居者も喜んでくれています。
特別な設備としては、外部にウンチダスト、フットシャワー、リードフック、内部にはペットフェンス、張替えしやすいようなペット対応クロス、ペット用床材、感電死防止のコンセントなど様々な配慮をしています。
これらのコストはそんなに高くありません。賃料が相場より高く取れたり、空室率が下がるのでペイできます。
なによりも、オーナーさんがペットが大好きだったのでそのような企画になったのです。
入居者同士も同じペット好きな人が集まり、コミニュケーションもしっかりとれているようです。

福田
ペット同居可というのはありますが、どうも古い建物の空室対策に使われているケースが多いですねえ。
このように最初から、明確に「人とペットがともに心地よくあるように」というようなコンセプトで作られた賃貸住宅は意外に少ないのが現状です。
賃貸だからペットが飼えなく困っている入居者が多いですよね。困っているところに商売のネタが転がっているんですね。
賃貸管理会社も最初はペットを嫌がりましたが、今では市民権を得ているようです。逆にペットと同居されていた方のほうが退去時に修繕費をきっちり払ってくれるようです。

里奈
賃貸住宅も差別化の時代がきています。その差別化戦略には、大きく二つの方向性があり一つは「長期安定経営型」とその対極に「短期回収型」というテーマがあります。
判りやすく言えば、「長期安定経営型」とは投下資金をかけた分だけ立派なものができ、入居者の評判は良いが資金の回収に時間がかかる建物。「短期回収型」とは投下資金の回収は早いが、寿命の短い建物です。
虫の良い話ですが両立する建物はできないんですか?

白沢
実はその矛盾を解消する建物を作ったことがあるんですよ。
端的に言えば、家賃が高く取れて建築コストを下げることが出来れば、短期回収につながり、それで長持ちすれば長期安定経営となるわけです。
一般的な住居系地域で、建ぺい率60%・容積率200%という土地を例に取り、研究開発した賃貸住宅があります。
それは新発想の2×4の3階建てマンションですが、高収益、高グレードを目指したものです。敷地条件等に制限はありますが、建物が軽量である為、杭ではなく地盤改良で基礎工事が可能です。また、木造ですのでゼネコン等の二重の経費の掛かる建設会社ではなく、一般の工務店で施工可能です。
賃料は若干減りますが、世帯数は鉄骨造・RC造と変わりません。
杭を含めた建築コストでは、鉄骨造・RC造が坪70万であるのに対し、坪50万程度で建築出来ますので、コストパフォーマンスに優れています。
安普請ではなく、重量感のある16ミリの耐火使用の外壁材やフル装備の設備を付けるので高級感はRC造を上回るものができたと自負しております。

福田
RC造は時に借金コンクリートなどと揶揄され、コストパフォーマンスに問題があります。一方木造はどうも安普請で長持ちしないといった問題があります。そのどちらの建物の良いとこ取りしたような建物ですね。私は基本的に短期回収できる計画が前提だと思いますが、安普請にならないようにするところが一番の悩みでしたからね。

里奈
オーナーの思いと設計士の思いがぶつかることが多いと思います。白沢先生はどのようにしてその違いを解決していますか?

オーナー様と私共の考えは、根本的には一緒の場合が殆どです。大体の場合は、「収支を短期で考えるか」、「長期で考えるか」と言う点での食い違いが殆どです。
設計段階では、収支は短期回収であっても、建築本体は長期的に収支が得られるように取り組みます。10年で回収しても15年~20年目に大改修工事が必要な設計は、設計事務所としてお薦め出来ません。
「オーナー様の資産形成のお手伝いをさせて頂いている」と言う観点から、代替案も含め、徹底的に話し合います。どちらかと言うと、施工会社とぶつかることの方が多いです。

福田
実は、施主に優しく、施工会社に恐いといわれる設計士がいいんですよ。通常、皆さん逆やっています。
施主には専門知識でごまかしたり、できない理由を並べ、施工会社にはゴマをするというケースが多いんですよ。
施主のために役所や施工会社と戦う設計士ほど頼もしい存在はありません。

里奈
白沢先生自身も自ら設計した賃貸住宅を経営されているとお聞きしていますが、どんな点に一番気をつけて設計されましたか?

白沢
テーマは「短期回収かつ長期安定経営」です。コンセプトは「入居者の方々がステイタスを感じる賃貸住宅」と言う事で設計をしました。
従って、デザインをした部分は「道路側の自然石貼りのエントランス及びアプローチ」、「人造石貼りの塀」、「サイクルポート」、「パンチングメタルに囲まれた外部階段」です。全て入居者が出勤・帰宅の際に見える部分だけです。
また、耐用年数・メンテナンスを考慮し、3階建てですが、防水施工を止め、屋根を掛けています。外壁は、ALCに吹付タイルとし、後々タイル貼りに出来るようにしてあります。

里奈
今の話が一番ノウハウ入っているんじゃないですか?

福田
そうかも知れません。

まとめ

1. 賃貸住宅経営も競争が激しくなり、差別化戦略を採るオーナーも増えてきました。コンセプト賃貸住宅といい、特定少数の入居者にターゲットを絞った専門店のような賃貸住宅が登場しています。音楽家向け、ペット同居向け、バイク所有者向けなど様々なものが世にでています。今のところ駅から遠いなどの理由で採用されていますが、これからは積極的にこのようなコンセプト賃貸住宅を取り入れるオーナーが増えてくるでしょう。
2. お金をかけて良い建物を建てれば、入居率も良く、建物も長持ちしますが、投下資本の回収に時間がかかります。いわいる、儲からない建物になってしまいます。一方、お金をかけずに建てれば、資金の回収は早くできますが、建物は長持ちしません。依頼者はいわいる長期安定型の賃貸住宅経営をめざすのか、それとも短期回収型の賃貸経営をめざすのか方針を決める必要があります。
3. 「短期回収かつ長期安定経営」という矛盾したテーマに取り組んで成功した事例があります。仕様を豪華にした木質3階建て賃貸や白沢先生が自分で経営している先程の事例です。
お金をかけるところとそうでないところを明確にしています。入居者の方々がステイタスを感じるところにはしっかりお金をかけています。