ふくちゃん・りなの不動産投資学校
第10回 入居待ちのでる賃貸住宅の設計について
◆ゲスト 夢工房建築設計事務所 白沢宣夫(一級建築士)
里奈 (ゲスト紹介)
1993年 夢工房建築設計事務所 設立、スターツ・三井ホーム・ミサワホーム・アパマンショップなど大手メーカーの住宅やマンションの設計を手がけた経験を活かし、幅広く活躍されていらっしゃいます。
依頼主の意図を的確につかみ、依頼主と伴に楽しみながら夢やテーマを形にしていくことをモットーとされています。
福田
本日のゲストの白沢先生ですが、最初にスターツに入社され、最初研修の意味も含め、賃貸住宅の営業をやった経験があるんですね。だからなのか分かりませんが、依頼主の意図を的確につかむことができ、それをスピーディーに形にできるんですよ。
プランニング力は当然抜群ですが、何と言っても人柄の良さに定評があり、紹介やリピーターの多い設計士です。
福田
本日のテーマですが、「入居待ちのでる賃貸住宅の設計について」ということです。ちょっとオーバーなタイトルですが、設計しだいで建築コストと家賃設定がほぼ決まってしまう現状からすると、あながちオーバーな話ではありません。
ファイナンシャルアナウンサーの里奈さんに質問をしていただき、白沢先生が答え、私が解説を加えていきます。
里奈
まず設計士と言っても色々な分野に分かれていると聞いたことがあります。デザイン設計、企画設計、構造設計、実施設計など役割が違うと思うのですが、簡単にその役割を説明してください。また、白沢先生の役割は何ですか?
白沢
設計は大きく、意匠・構造・設備と分業化されます。各々がスペシャリストですので設計事務所を構え、横の繋がりの中で設計・監理をして行っています。
又、ゼネコンの設計部や総合設計事務所のような場合は、各々の分野が内部にあるため
組織内で全てを取り行います。
日本の60%近くの設計事務所は「意匠」云わゆる、デザイン事務所であり、営業活動の手段としてデザイン設計、企画設計があります。
デザイン設計には芸術性、企画設計には多岐に渡る知識が必要となります。
実施設計は、詳細な建物のパーツを描きますが、デザインや企画を表現するための手段となっています。設計事務所で蓄積されたノウハウを加味し、意匠を具現化する設計業務です。
私は意匠設計と実施設計ならびに設計管理を行っています。
福田
賃貸住宅経営の成否は、設計事務所選びで決まるといっても過言ではありません。賃貸住宅の場合、法規制に強く敷地を最大限活かす設計ができることと、コスト管理が出来ることが最低条件なのですが、それに加え設計コンセプトを明確にできることが大変重要です。
依頼主のいいなりではいけません。また、逆に頑固一徹な設計士も困ったものです。依頼主と一緒にコンセプトやテーマつくりができ、それをスピーディーに形にできる設計士でなければ不合格です。
里奈
賃貸住宅では企画設計が最も大切だと言われています。具体的にはどんなことを企画に加えるのですか?敷地や法規制などの条件面とソフト面に分けて説明してください。
白沢
賃貸住宅を企画していく上で、最も重要な要素は「立地条件」を見極めるということです。
最寄駅までの距離、交通手段、周辺環境などを膚で感じ、その立地がシングル向けあるい
はファミリー向けなのか、設計条件の大きな判断基準となります。
つぎに「敷地条件」を調べます。面積、方位、接道状況、近隣状況、地盤の強度などが挙げられます。いずれの場合も法規制を抑えつつ、建物のボリュームやコストを考えながらゾーンニンク゛といって大まかな配置のプランクニングをします。
法規制では、都市計画法に依る開発行為の有無、建築基準法に依る用途制限、建ぺい率、容積率、高さ制限、消防署の規制などをチェックします。賃貸住宅には自治体により窓先や避難通路の確保など固有の規制があるので注意しなくてはなりません。
これらを踏まえた上で、建物のボリュームを把握したのち、経済的な設計を意識しながらもソフト面を加味して行きます。ソフト面は企業秘密です。
福田
実はソフト面の企画は本来設計士の仕事ではありません。通常アパートのオーナーとなる方が賃貸管理会社などからヒヤリングして、その地域で必須の設備や間取りとさらに差別化するための独自のサービスを決定し、それを設計コンセプトに入れてもらうんですよ。白沢先生の場合、経験豊富なので、オーナーに代わってそこまでやっちゃっているんですよね。
里奈
白沢先生ソフト面は企業秘密ですか?ズバリ入居待ちのできる賃貸住宅の設計方法を教えてください。できれば、お金をかけずに入居者を満足させられる設計ポイントなどを知りたいのですけど?
白沢
一言で入居者と言いましても多種多様なニーズがあります。最近、ブームとなっているデザイナーズマンションやテーマ型アパートのように、デザインや機能に特別なことを無理やり追及する必要はないと思います。
むしろ多くの不特定多数の入居者に支持が得られることが大切だと思います。
室内に関しては入居者の方々が、様々な生活スタイルを描けるように、ある程度満足できる広さと収納があればよいと思います。つまりシンプルイズベストです。
重要な事は、住宅設計にも共通しますが、「ここが我家だ」というような、ある種のステイタス感を演出する事です。たとえば、エントランスまでのアプローチ、エントランスから部屋に至るまでのアプローチを重視することです。
福田
白沢先生、出し惜しみしていませんか?白沢先生の実例を見ていると判りますが、入居者が最初に見学に来たときに、道路のどっちの方向から見学に来るのか?そして、その目線からであれば最も目に付く部分はどこなのか?その部分をどのように見せればよいかをイメージしていますよねえ。
しかも、お金をかけるところとかけないところを分けていますよねえ。人間の目線は下に行くので、床材にはお金をかけ、天井は手を抜いたりしています。また、玄関扉のドアノブなどは大変目につくところです。ドアノブ一つだけでも豪華なものをつけると、その建物全体が豪華に見えたりすることもあるんですね。
それと、勾配屋根つきの作品が多いことや、外壁材の耐久性にこだわりを持っているんですよね。これは、将来の建物のメンテナンスコストを意識しているんですよね。
白沢
はいそのとおりです。
里奈
設計士が決め手と言うことは理解できたのですが、設計士の上手な選び方を教えてください。また設計士の先生と付き合い方で気をつける点は?
白沢
賃貸住宅の設計は、デザイン・技術力だけでなく、企画・経営を含めた総合的な設計になるわけです。
ですから、依頼主と同じ価値感を共有できる設計士でなくてはなりません。
まずは色々な要望や質問を率直にぶつけてみてください。
一生懸命に依頼者の意図をつかもうとする設計士であれば大丈夫です。
また、選択肢を示してくれる設計士がいいですよ。A案、B案、C案と三つ用意してくれて、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明してくれ人なら間違えないです。
依頼者の意図を理解したうえで、積極的な提案がでてくれば合格です。
付き合い方は普通でいいと思います。特に先生ということで遠慮する必要はありません。人間ですから、気に入った依頼者にはトコトンお付き合いしたくなるのが人情です。信頼関係ができたら必要最小限の要望をしっかりお伝えし、後はお任せする。そのような依頼主とは一生の付き合いができています。
福田
実は設計士の能力差というものは物凄い差があるんですよ。有能な設計士を見つけたら、80%仕事は終わったものです。
賃貸住宅の設計士は、建築の法知識だけではなく、多くの入居者から支持されるデザインを創造する能力、コスト感覚、施工会社を監理するマネージメント力、そしてなによりも依頼主の意図を的確につかむ能力が必要とされます。
過去の実績を見せてもらい、その建物の設計コンセプトと10個のチャームポイントがスラスラでてくるか確認してみてください。
スラスラ答えてくれる先生なら本物です。
この設計屋さんの世界では、単に線だけを引っ張り、確認申請を通すことだけしか考えていない設計士が多いので注意してください。また、逆に自己満足のデザインに良いしれる設計士だけは避けてください。
まとめ
1. 賃貸住宅経営の成否は企画や設計によると言っても過言ではありません。一番の近道は良い設計士とめぐり合うことです。設計士も専門化が進んでいます。賃貸住宅の設計に手馴れた先生を選びましょう。
建築のデザインだけにとらわれず、コスト管理や施工会社の管理、依頼主とのコミュニケーションが取れることが設計士として重要な要件です。
2. 入居待ちのできる賃貸住宅は、何も奇抜な企画や設計をすることではありません。その地域のニーズにあった間取りにすることと、シンプルイズベストであるということです。まずは不特定多数の入居者に支持されるために、ある程度の広さと収納を確保するということ。そして、エントランスまでのアプローチとエントランスから部屋までのアプローチにステータス感を演出することです。
くれぐれも、奇をてらった設計をすることではないので注意してください。
3. 設計士との付き合いで大切なことは、遠慮しないことです。自分なりのこだわりを伝えトコトン意見交換してください。真剣に依頼主の意図をつかんでくれ、具体的な提案をしてくれる設計士であれば合格です。